第16話しっぽと見た夢長編ファンタジー

実夏です。

こちら、

梅雨だ!読書だ!読んでけどろぼう!という小説をお送りしているブログです。

現在は長編ファンタジー小説しっぽと見た夢をお送りしています。

初めての方へ

簡単すぎるあらすじ

祖父母と暮らす9才の浩太には、ふさふさふわふわのしっぽがはえている。

死んだ両親の法事をした日、参加者の叔父と叔母が、浩太の母は生きていると話しているのを聞いてしまった。

生きているのにどうして死んだことにするの?

どうしておれにかくすの?

浩太はしっぽの存在をしる親友祐樹と、母を探しとしっぽがはえている謎を、解明しようと計画を立てた。

第1話はこちらから第1話

前回、第15話はこちらから第15話

今回16話は下のほう、そのうちでてきます。

今日はおそくなりました。。

いやあ、眠いです()o

めずらしくたわ言なにもなしで、

本文にいきたいと思います!

でもたわ言好きだから次はまた書いちゃうけど

そうだ、たわ言のかわりにかわいい奴ら置いときますね。

第1話はこちらから第1話

前回、第15話はこちらから第15話

以下から本文。

浩太の属したチームは運動会で見事優勝した。浩太にとっては小学校に入って初めての優勝だった。しかも浩太自身、最後のチーム対抗リレーでアンカーを走り、二人抜の一位になったのだ。最後に活躍したおかげで、浩太が優勝をもたらしたかのようにみんなから褒められた。

嬉しいに決まっている。みんなで一位を獲る経験も、いっせいに褒められる経験も初めてで、感じたことのない充足感を得たのだから。一日中駆け回ったせいで体中にこびりついた汗や砂埃など、全く不快にならなかった。

いつもより遅い、夕食時に家に帰り着いた。玄関で待ってましたと迎えたミツ子が、浩太を居間へ通す前に風呂場へ直行させる。体操服を脱ぐごとに、横で手を差し出すミツ子へ渡さなければならなかった。彼女は服を受け取ってはわー、すごい砂と声を上げる。

出迎えてくれたから、てっきり褒めてくれるのかと思った浩太は少しふてくされたが、風呂に入ってシャワーをかぶった時、流れていくたくさんの砂を見て驚いた。あまりの汚れに達治が出動して、ごしごし髪をかき回した。久に感じる、頭がぐらぐらと揺れる強い力。

じーちゃんいたい

このぐらいせんと砂が取れんぞ。ばーちゃんに怒られるんだからな

達治は唸るように返したが、よく頑張った勲章だ、と付け加えてくれた。

なぜか体も全部洗ってくれた。じーちゃんに貸せと言われながらタオルを取られ全身をごしごしとされ、浩太はくすぐったくて体をよじった。くすぐったいが、心地いい。忘れていた、今よりもっと幼い頃を思い出す。楽しい運動会がまだ続いている気分だ。

達治のおかげで砂が流れ落ちるどころが、普段よりきれいになった。いつものように達治と一緒に湯船に入った。お湯が湯船からあふれた。ナイアガラを上から見ているようだと浩太は思った。

運動会の疲れからか、お湯に包まれたとたん、ぼんやり眠くなりはじめる。すると、体が浮いて、達治のひざの上に降りた。達治が乗せたのだ。

頭の後ろから優しい声がやってきた。

浩太、今日はよく頑張ったな。最後はリレーで一番になって、学校中の主役になってたじゃないか。じーちゃん、うれしくて健おじと飛び上がったぞ

おれ、みんなにほめられちゃった

すぐに目が覚めて、浩太は頬を高揚させた。湯の温かさと喜びと両方によってだ。学校のみんなにも家族みんなにも喜ばれた。こんな良い事があるだろうか。

おおそうだろう。あれで優勝しようなもんだ。みんな頑張ったけど、浩太は主役級に頑張った

えこひいきしてくれるのは嬉しい。でも、みんなで勝ちとった優勝であることを忘れてはいない。

四年生の運動会も、優勝するぞって祐樹と言ったんだ。祐樹はちがうチームだったから、四年生になったら同じクラスになるといいなあ

そうだな、祐樹君ともな

達治の声が弱くなったような気がした。湯船の水面はゆらゆら揺れて、単調な動きはいつまででも見ていられるようだ。

浩太の体を支えてくれていた、達治の力が口が強まった。それと一緒に浩太の中の運動会時間は終わってしまった。うかれる時間は終わり。なんだかそんな予感がしたのだ。

浩太。これは今日、浩太が一生懸命頑張った運動会とは、また違う話なんだけどな

達治はやはり優しく、しかし強張った調子で言った。

今日、健おじが弁当の時間に、同じクラスの守君に話しかけられたそうだ

浩太の心臓は激しく揺れた。あまりに大きかったので、湯船を揺らしたかも知れなかった。

ここは逃げられない達治のひざの上。

守君に、しっぽを見られてるかもしれん。浩太は、知ってたか

目の前がかすむようだった。

のぼせてきたわけではない。守のやつ、健おじに言いやがった。浩太は激しい後悔に包まれた。自分たちだけの中で言いあっていると思っていたから、達治や健介への対策は何も取っていなかった。

でもじいちゃんだって、なにもこんな時に言わなくてもいいのに楽しかった運動会も、気持ちの良いお風呂もいっぺんに消えてしまったじゃないか。

こんな状況で迫られた返事へ、誤魔化す技を浩太は知らない。しようとも思わない。震える瞳で、小さくうなずいた。

見られたのは本当なんだな?いつ見られた?

夏休み

なつ

達治は絶句した。浩太はもう彼の顔を見ることが出来なかった。温かいお湯の中にいるのに、寒くて震えて早く出たい。

そうか

弱しい声だけが、ふわりと風呂場に漂った。片目だけで達治を見ると、浩太と同じくらい肩を落とし、力ない顔でうつむいていた。責められてはいないとわかり、浩太は力を抜くように息を吐いた。

向けた片目が達治の目と合う。

見られたのか?どうして、じいちゃんたちに言わなかったんだ。知られてすいぶんたつじゃないか

いつ見られてのかわかんないけど、守がいきなり言いだしたんだ。おれ、ちがうって言ったのに、ずっと言ってくるんだ。守くらい、おれなんとかできるよ。だから言わなかった

でも夏休みからずいぶん経つな。守君を説得できてないじゃないか。そろそろじいちゃんたちに言わなきゃいけなかったと思うよ

責められている口調ではない。優しいけれど、諭されている。浩太は理解している。少し出ていた浩太の肩に、達治は手ですくった湯をかける。

早く言ってくれれば、じいちゃんたちが何とかしてやれるんだ。一人で解決しようとしちゃいかん。浩太のしっぽは浩太だけのことじゃない。じいちゃんやばあちゃんのことでもあるんだ

一人で解決してたわけじゃない。祐樹や義之と一緒だ。

でもそんなこと、言えるはずがない。

浩太は今のまま、正堂と違うと言っていなさい。どうせもう見せないし、わからないから。それから

達治の言葉がまた止まる。浩太には、これ以上のことは聞きたくない気持ちと、全部言ってほしい気持ちが同時に心で渦を巻いた。

確認したいんだが、守君の他に、しっぽのことを知ってる人はいないかな?いるのなら、今、じいちゃんに教えなさい

今度こそ浩太の心臓は締めあげられた。祐樹と義之の顔が浮かんだ。

祐樹がしっぽの存在を知っていることは、達治たちも理解している。問題は義之で、知られていると告げれば、なし崩しに母を捜していることも知られてしまう気がした。

浩太は幼い頭で必死に考えた。もしここで、義之もしっぽのことを知っていると告げたら?祐樹の兄である義之にバレるなんて、あり得る話じゃないか。達治たちが義之に話しを聞いたとしても、彼は大人だから余計なことは言わないだろう。母を捜していたことまで知られるはずがない。

それなのに、なぜこの口は動かない。

どうした。誰か知ってる人がいるんだな?

最後通告のような声がして、浩太は気がついたときには首を横に振っていた。

いない

絶対に達治の顔は見れなかった。

そうか、という声だけがした。大きな手で頭をなでられた。それが余計に浩太の心を押しつぶした。

運動会で浮いたり、義之と話して落ちたり、達治の言葉でぐるぐる回転したり。今日の浩太の心は、一日中ジェットコースターから降りられなかった。

少年たちが鉄棒で遊ぶ公園を、横目に見ながら通り過ぎる。ここはさして大きくもないのに、いつも子どもたちの声がある。他に遊ぶ場所がないのだな、と憂慮も危惧もない無関心さで、義之は歩き続ける。

家を出て、自転車で行こうと車庫を見たらなかった。最近運動不足の父親が勝手に使ったに違いない。車はあったが、免許のない自分は扱いようがない。運転で来たとしても、駅前まで走らせれば駐車代を取られてしまうから、結局歩いていくのがいいのだ。

待ち合わせのコーヒーショップへは遅れて着きそうだ。連絡しようにも、携帯電話の番号を聞いていなかったことに気がついて、諦めた。やり取りは一昨日、たまたま家の外に出たときに出会って話した、一度きりだ。

浩太の叔父らしい、としか認識のなかった健介からの誘いは、あの時からあった義之の杞憂を、悪い確信に押し上げた。

やっぱり画面、見られたんだろうなあ。他人事のように胸でつぶやく。

コーヒーショップの窓側のカウンター席に健介はいた。道の向こうから姿を見つけ、気休め程度に歩調を速めた。外をうかがった健介が気づき、親しみやすそうに片手を上げる。

義之は小さく会釈した。さすが大人。遅れたことを咎めない上に、緊張を解いてくれるような振る舞いだ。

カウンターってことは隣同士だ。正面で顔を見つめ合うよりいいのか、近すぎでよくないのか。アイスココアを注文して、健介のもとへ向かう。

座る健介の背中を見て、初めて足が躊躇した。写真で見る浩太の父親は線が細かったのに、その弟は対照的にガタイがいい。高校時代のラグビー部の友人を思い出した。彼は部の後輩を殴り退部した。

遅くなってすいません

席に座るなり言うと、振り向く健介は笑顔だった。

おお義之君。受験の追い込みで忙しい時に悪かったね

いえ。気分転換になります

おじさんとデートじゃあ、大した気分転換にはならないだろうけど

笑い方は運動会の時と同じく豪快で、見た目の印象そのままである。

話って

義之は端的に切り出した。前置きのじゃれ合いに付き合ったからといって、本題から逃れることを許してはくれないのだから。学生しか経験のない義之は、大人が使う上辺の慣れ合いというのが苦手だった。

ああ。そうだね

健介の顔から明るさが消えた。この、大人の威圧感も苦手だ、と義之は思った。やがて自分が、この状況の全てを拒否したがっているのだと気付き、胸の内で苦笑した。

健介の表情は落ち着いたものの、若者への穏やかさはそのままだ。

今日は聞きたいことがあって、来てもらったんだ。先に申し訳ないと謝っておくけど、運動会で、君のタブレットを拾ったときに画面を見てしまった

わかっている。義之はうつむきがちに頷いた。

画面には昔の話や絵が載っていたね。あれを見ながら、浩太たちと何を話していたのか、教えてくれないかな

やはり健介は運動会で、浩太の母について話し合う自分たちに気がついたのだ。今日ここに来るまでにいろんな言い訳を考えたが、最終的には考えることを放棄してしまった。やっぱり策を練ってくるべきだった。何も言い訳が思いつかない。このまま下手なことを言えば、隣にいる大人はどんな脅威を向けてくるかわからない。

おじさんの、思ってる通りだと思います。浩ちゃん、しっぽとか、お母さんとか、心配してました。だから俺が勝手に推測して、勝手に調べて話しました

義之は細い目をさらに薄目がちにして、極力淡と言った。

しっぽがきつねみたいだったので、勝手にきつねが人間になったんじゃないかと思って、そういう話をしました

浩太がしっぽを君に話したのか

いえ。祐樹の部屋で話をするのを、隣の部屋だからいつも聞こえてて。しっぽを気にしてる感じだったから、力になれないかと思って俺から加わったんです

そうか

健介はカウンターに置いた肘に体をもたれさせ、長い息を吐く。

で、きみはしっぽを実際見て、きつねのようだと思い、きつねについて調べてあの画面に至り、浩太に話した、と

そうです

浩太は、なんて

よくわからない、と言ってました

脳みそをフルに使うだろうからと甘いココアを注文したのに、一口もつけられずに氷ばかりが溶けていく。そんなことは無視して、ただ小さく頭を動かした。

勝手に変な入れ知恵して、すみませんでした

頭を下げた。頭上の健介から即答はなかった。彼のアイスコーヒーも会ったときから減っていなかった。

いやいや。せめてるわけじゃないよ。正直に話してくれて、ありがとう

健介の右手が義之の肩に乗った。運動会で後ろから叩かれたときよりそっと置かれた。

しっぽについては、確かに浩太には多くを話していない。それは、話さなくても大丈夫だから話してないんだ。おじさんたちも浩太を育てる側として、いろいろ考えてるんだよ、ちゃんと。

君が勝手にしたことだと言ったけど、浩太は君の話をちゃんと聞いていたようだったね。君を頼れるお兄さんだと思ってるんだろうな。祐樹君は前からしっぽを知ってるし、君が知ってしまう分には仕方ないと思ってる。しっぽのことはおじさん達がちゃんとしてるから、心配はいらないよ。君は浩太の話を聞いてくれながら、遊び相手にでもなってくれると嬉しい

はい。

義之は小さく返事をした。駅前のコーヒーショップへ、家着のような服装できたうつむいた青年に、健介はそれ以上のことを聞かなかった。会った直後の笑みを取り戻し、息抜きの逆効果だったかな、と気遣いを見せながら席を立たった。

義之は初めて笑みを浮かべ、とんでもないですと言った。ほぼ初対面の二人に要件以上の会話などあるわけがなく、無駄に引き延ばさず早に店を出ることにした健介には好感をもった。

家へは同じ方向だが、健介は用事があるのか別方向へ歩いていく。義之は席に座ったまま彼が小さくなるのを眺め、初めて肩の力を抜いた。

ここで自分の口にした内容は、誤魔化してはないが洗いざらいでもない。中間を漂う核心の抜けた話を、健介はどこまで正面から受け取っただろうか。

少しずつ落ちついてくると、今度は健介が自分に向けた話を噛み砕いてみた。健介に言われたことを、彼はこう理解した。

しっぽを知られてしまったことは仕方がない。勝手に調べたことは水に流すから、これからは何もせず、遊び相手にだけなってくれ。しっぽも母親の事情も俺たちが処理するから、君は余計なことをするな。

やっぱり大人は苦手だ。義之は椅子の背もたれに体重をかけ、重い息を吐きだした。

日曜日だったこの日、浩太は一人で市立図書館にいた。大きな建物と広い入口は、威圧感バリバリで彼は怖気づく。入口で立ちつくすものだから、後から来た人にぽんぽん抜かれた。

学校以外の図書館に一人で来るのは初めてだ。広い。広すぎでなにがなんだかわからない。どうして図書館なのに二階、三階があるんだ。

たまたま進んでいきついたと事に児童書コーナーがあり、浩太は安堵した。親子連れの幼児が絵本を読んでいたり、浩太と同じくらいの子どもがたむろしていたりする。

どこだ。どこだ。目的の本がある所。

さがしもの?

エプロンを着た女の人に声をかけられた。はっとふり返った浩太は、反射的に言っていた。

ようかいの本があるところ

女の人はにこりと微笑んで、浩太の背中に手を添えた。

こっちだよ。案内しましょうね

本当のことを言ってよかっただろうか。大丈夫、お姉さんに目的はバレていないはずだ。自分が妖怪かもしれないことについて調べようとしているだなんて。

誘導されるまま、ぎこちない足取りで浩太は歩いた。

つづく